【短編集】君に届いてほしいから─春─






「名前……さきよしでいいの?」


…こんなことしか言えない俺も俺だけどさ。



目の前の黒い眼は一回揺らいで眉間にはもっと深いシワができた。



あーあ、完全に変なやつだとおも「…さくら。」






「…おかもとさくらです。」




黒目がちの眼を伏せて、言う仕草がなんとなく目に焼き付いた。