【短編集】君に届いてほしいから─春─






「はあ?変なやつ」


翔ちゃんは、くしゃっと笑うと自転車にまたがった。


「あ、結芽」





「…明日は遅れんなよ」




夕焼けのせいで翔ちゃんの顔はおぼろげだった。


ただ赤に染まっていく背中を見つめた。