【短編集】君に届いてほしいから─春─





─…「結芽、着いた。」


あ…もう着いたんだ。


赤く染まった空が眩しくて目を細める。


「ありがと」


「おーまた明日な」



そういって笑った翔ちゃんの顔はいつもと変わらない。


あの寂しそうな背中も、今はもういつもと同じ。