【短編集】君に届いてほしいから─春─




「なー…結芽ー」


帰り道。
翔ちゃんの背中に掴まって坂を下りる。


「なにー?」


こうやって二人乗りするのも、あと明日だけなんだ…。




「俺…高校行ったら寮で生活すんだー」


「うんー」



「寂しいかなー?」



初めて聞く、翔ちゃんの弱音。


「遠いよなー…とーきょー……」


いつの間にか広くなったと思った背中もなんだか今日は寂しそうで。


私はぎゅっと力をこめた。