【短編集】君に届いてほしいから─春─




「……考えて、ないよ」


私は美優ちゃんの瞳から視線を窓に移した。



「またそうやってー…」



雲を目で追ってみると、美優ちゃんの声もどこか遠くで鳴ってる気さえするんだ。







「藤崎くん、明日卒業したら東京行っちゃうんでしょ?」





…─忘れたいことも忘れさせてくれるかもしれないって。