愉しげなその声は、心のどこかで待っていたひとのもの。


「は、離して」

「って、言うわりに抵抗しないね?」


素直に受け入れるには、恥ずかしいんだよ。

なんて言えるわけないけれど、全部分かったように笑うから、その腕に身を預けてしまう。


「待たせてごめんね? 仕事、終わったなら一緒に帰ろ」


誘う言葉に、頷く。


戸締まりは、今は席を外している司書の先生に任せて。

ふたりで図書室をあとにする。


勝手に絡められた指が、離れなくて抵抗すれば。

何を思ったか強く握られて、戸惑いながらも握り返した。


甘くはなれない私の放課後に。

砂糖をどばどば落としこんできた彼が、上手くは言えないけど、好きで。


[end!]