だけどこの気持ちを今すぐに初音に伝えようとは思っていない。



今言ったらきっと振られるだけだ。



なら、この距離を今は大事にしたい。



「ありがと、九十九。分かりやすかった。」



ちょっと悔しいけど、と初音は笑う。



「どういたしまして。でも、本当に半端ないよなぁ。課題の量。」



大会前くらいちょっとは免除してくれないもんかな。



それでなくても死ぬ練習がさらに熾烈を極めてるっていうのに。



「ホントにね!量の問題じゃないでしょって感じ。私でも大変だけど、九十九はプラスして部活もだもんね。」



お疲れ様、と背中を叩いてくれる。



背中が熱い。



それを誤魔化すように俺は笑う。



「初音には敵わないよ。」



きっと誤魔化すように出た言葉は俺の本音に一番近いと思う。


なぜなら、たったそれだけで俺の疲れなんて吹き飛ばしてしまえる初音は本当に最強だから。