憐は差し出された手を握り返す。 途端、そのまま腕を引かれ優夜の胸のなかにすっぽりと埋ってしまった。 空いた背中からは刹那の温もりが重ねられる。 前と後ろから温度の違う温もりに抱き締められ、憐は安心しきった顔で微笑む。 「落ち着く…」 「…憐」 「ん?」 耳元で囁かれる声に憐は心地よさを感じ、瞼を下ろす。 「ごめんね…? 魑に…憐をとられた気がして…」 優夜の小さく、寂しげな声は暗くなった部屋に吸い込まれ消えていった。 憐はクスリ、と笑い優夜の頬に手を添える。