「優夜、淹れてやれ」
「自分が淹れないからって…全く」
優夜はため息をつきながら刹那の腕を引き部屋を出ていく。
自分が連れていかれる理由が分からず、刹那は慌てて優夜に着いていった。
「フフ…」
一人になった憐は椅子から立ち上がると、ベッドの下にある瓶を取り出す。
栓を抜き、香りを嗅ぐ。
「"人" か…」
憐は瓶を握り締める。
ふと、思い出す。
『ね、憐は…』
『ん?』
『……憐は死ぬ前にやりたいこととかあるのか?』
いつだったか三人で交わした会話。
あの時言った許されないことは破ってしまった。
憐にとって死ぬ前にやりたいことは一つしか思い付かなかった。
"不完全じゃない、本物の人間になってみたい"
二人が近くに居れば絶対反対するだろう。
だから今、優夜と刹那が近くに居ないこの時は絶好の機会だった。
憐は飲み口に唇を添え、震える手で瓶を傾けた。

