優夜が拗ねているのを尻目に、刹那は憐を大切そうに抱き締める。
耳に微かにかかる刹那の吐息に憐は身をよじる。


「擽ったいよ…刹那」


刹那は優しく笑うだけで何も喋らなかった。
しかし、より一層、憐を抱き締める腕の力を強くした。

憐が体の位置を変えて刹那と抱き合うようなかたちをとった。

途端、背中に感じる温もり。
優夜だ。


「「ずっと…永遠に、憐の傍で憐を愛することを誓います…」」


優夜と刹那は誓いを立てるように憐へ囁いた。
二人は憐の頬に口付けを落とし、もう一度 抱き締めた。


「憐…ごめんね。 憐のコト…信じなくて…」

「魑のこと?」


優夜は頷く。
憐は儚げに笑うと優夜に向き合う。


「嫉妬…してくれたの?」

「だって…」


優夜は憐の肩に顔を埋めながら呟いた。


「怖いんだ…」

「安心して…? 優夜のことも、刹那のことも、ずっと 大好きだから」


憐の言葉に優夜は安心したように微笑むと憐に顔を近付けながら、甘く妖しく呟いた。


「【不完全な愛しか、君には与えられない、それはとても悲しいこと…―。】」


憐は寂しげな顔をしている優夜を見つめながら、儚げに微笑んだ。


「【不完全な愛だからこそ…、不完全な僕に空白な愛を教えてくれる…―。】」



―別れの日まで、後
【5日】