「この前は楽しかったのにな。若い女が、真っ赤に染まって死んでいった」

「あれは傑作だ。カメラに収めたいシーンだったが、生憎この場に持ち込みは禁止だ」

「私は今でも記憶に留めていますよ。若い女が撲殺されるシーンは、私のお肌をツルツルにしてくれる」

 それでも欲求はとどまる事を知らない。それ以上の狂気の光景が見たいのだ。

「これ以上の快楽をお求めなら、いつでもご提供しますよ」

 不意にモニターから、誰かの声が響いた。

「誰だ?」

「これ以上の快楽だと?」

 見物客が視線を向ける闘技場中央。既に戦士達の姿はなく、別の人物が佇んでいる。恐らくは闘技場のディーラーと思われる。

 黒いマントで全身を覆った人物だ。頭までフードで覆っている為、その顔は見えない。