モテ男と地味女

訳も分からず連れてこられたのは、外見の派手さに似合わないシックでオシャレな喫茶店。
メニュー片手に高麗くんがスマートに注文を店員さんに告げた。

しばらくして、いい香りの紅茶とコーヒーが運ばれてきた。
カチャリと私の前にティーカップが置かれた。
「いい香り。」
「テデアンジュ。」
「テデアンジュ?」
「日本語だと天使の紅茶。ミルクティーでも美味いから。」
「えっと・・・」
「あんたのイメージで紅茶選んだから。飲んでくんないと困るんだけど。」
「私のイメージ!?」
「そ、あんたのイメージ。早く飲まないと冷めちゃうけど?」
「あ、いただきます。」
一口飲むと、口いっぱいに優しい甘さが広がった。
美味しいことには変わりないけど、どうしてこの紅茶が私のイメージなのかはさっぱり分からなかった。
ふと、向かいの席に座る高麗くんを見ると足を組んでコーヒーカップに口を付ける姿が何とも絵になっていて、ドキドキした。

「さくらって言ったけ?何かあっただろ?」
「え・・・」
「じゃなきゃ、サボりなんてしないじゃん普通。」
「高麗くんも何か?」
「あー、その“高麗くん”っての止めて。拓海でいい。」
「拓、海くん、も何で学校サボってるの?」
「成績は良いくせに何だその格好はって言われたから。別に外見で勉強するわけじゃねぇのにムカツクじゃん。」
「確かに。」
「で、本音はセンコー自身の評価が下がるからって陰で言ってるんだぜ?最悪じゃん。」
「酷い。それ、すっごく酷いっ!!」
「だろ?だから、俺はサボってんの。さくらは?」
「わ、私は・・・」
相手のサボリの理由を聞いてしまった手前、話さないわけにもいかず私はクラスの子に”帰れ”と言われ結局的にはサボりをしてしまったと話しをした。