耳に入る音も
目に入る景色も
全部の時間が一瞬止まったんじゃないかと思った。

気付けば橘くんを突き飛ばして、
無我夢中で走って帰った。
ド、ド、ドっと心臓が飛び出そうなくらい動いてる・・・

このまま家に帰れるわけもなく、図書館で時間をつぶそうと歩いていると声を掛けられた。

「ねぇ、その制服、西高のだよね?」
「西高のコがこんな時間に何してんの~??」
「俺らと一緒、サボリ??」
「じゃぁ、一緒に遊ぼ。ねっ?」
「あ、いえ、私はっ」
「固いこと言わないでさぁ、いいじゃん。」
両腕を掴まれて、引っ張られて、どうしていいか分からなかった。

「おい、やめとけ。ヤがってんだろ。」
「「タク。」」

タクと言う人に声を掛けられると私の腕を掴んでた2人はすぐに腕を離してくれた。
「悪ぃな、俺のダチが迷惑かけて。」
「いえ、助けて頂いてありがとうございました。」
「知ってるかもしんねぇけど、俺は北高の高麗 拓海(こま たくみ)」
「私は、西高の碓井 さくらです。」
「あのさ、ちょっと付き合ってくんねぇ?」
「へ?」
「タク、俺らは?」
「あーお前ら帰っていいわ。ワリィな。」
「いいって事よ。じゃあなタク。」
「あぁ。」
「タク、また明日な。」
目の前にいる、北高の高麗くんは容姿端麗、頭脳明晰そして喧嘩に強いと西高でも有名だった。
耳にすることがあっても実際どんな人なのか知らなくて、初めて会った感想は、
綺麗な人だなぁ一言だった。