Brute ―あいのうた、きみのうた―

そのまま香波を床に押し倒した。


「ゆく…ちゃん?」

垂れた奥二重の目をしきりに瞬かせ、俺の真意を問うように見つめてくる。

その瞳に胸が締め付けられるように痛んだ。

それを隠すように、香波の目を、唇を、口づけで塞いだ。

頭の中のあの男の顔を消し去るように、香波の体中に唇を落とした。


それでも香波は俺に問いかけてくる。
「行ちゃん?」と。
俺の口づけに応え、受け入れてはいるものの、いつもと違うこの状況を把握しかねているようだ。

その問いかけに、俺は小さな声で呟くように返した。



「どこにも…行くなよ。
他の男に、あんな風に笑うな。」