ホテルの外観を見たときの、香波の驚いた顔。
部屋に入った瞬間の驚きと感激が入り混じったような表情。

「こんな高そうなところ…大丈夫なの?」
困ったように、しかしどこか喜びを隠しきれないといった表情で香波は聞いてきた。


俺は平然を装い、笑って見せた。

「変な遠慮すんなよ。
大丈夫だよ。もちろん。
…それより香波は、本当に良いのか?」

安心させるのと同時に、自分の胸の中にあった戸惑いと疑問をぶつけた。


香波は薄暗い部屋でもわかるほどに顔を赤く染め、小さく何度も頷いた。


「…私は行ちゃんが、好きだから。
…行ちゃんも、そうでしょう?」


それを聞いて、俺は香波を抱きしめずにはいられなかった。
身体が熱くなるのがわかった。
それは俺のか、それとも触れた香波のものか。
引き寄せた香波の耳に自分の口を近づけた。


「決まってるだろう?
大好きだ。
一生大切にする。何があっても。」