まだ、女性は来ていなかった。

紀子は、先に中に入って待っていた。

5分くらい遅れて女性が入ってきた。


朝とは違い、着物姿で現れた女性は、

店に居た全員の目を惹いた。


いかにもクラブのママといった雰囲気だったが、

「美しい」という言葉の方が似合う気がした。

紀子がレモンティー、女性はアイスミルクを注文した。

「電話ありがとう。これ、つまらないものだけど、朝のお礼。受け取って」

と言って、小さな包みを渡してくれた。

《これ買ってて遅れたのかなぁ…なんか悪かったかなぁ?》

紀子はお礼を言い受け取った。

明るいローズ系の口紅だった。