あの日も今日のように、ひどく晴れ渡った一日だった。


泣かずに別れようと決めていたのに、美雪が最初に泣いたから、あたしまで泣いた。


それでもレンは気丈だった。



「幸せになれよ。」


それが唯一、レンが美雪に掛けた言葉。


ふたりは最後まで互いを思いながらも、別々の道を歩むことを決めたのだという。


一緒にいることだけがすべてじゃない、と言っていた。



「アイツは自分の家族が大好きだからさ、無理して俺とここに残ったってきっと後悔するってわかってる。」


「………」


「だから辛い想いさせるくらいなら、どんなに悲しくても笑ってばいばいって言ってやりてぇじゃん?」


美雪が乗った車が見えなくなってから、レンはそう漏らしながら必死で涙を堪えていた。


相手を大切に思うという形は様々だけど、ぐしゃぐしゃな顔をしていたレンは、だけどもあたしの誇りだった。



「今の廉人は最高に格好良いよ。」


そう言ったあたしに、うるせぇ、と口を尖らせた彼はいつものように、



「廉人って言うな!」


と、不貞腐れる。


気付けば泣きながら笑っていた。


あれからあたし達はまたふたりぼっちに戻ってしまったけれど、でもそれは孤独とは違う。


今は未来を向いて生きられるから。