嫌われることには慣れているし、有名税だと思えば笑って流せるからと、レンも前に言っていた。


まぁ、協調性のないあたしだし、色々と目障りなのだろうから。


ドレスを借りて、髪の毛を整えてもらい、調理場で携帯をいじりながら煙草の煙を吹かしている時だった。


突然にあたしの手の中でそれは震える。


ディスプレイに“北浜社長”と表示されていた時には、驚くままに二度見してしまった。



「はい。」


『ルカ、元気にしてたか?』


少ししゃがれた声にいつものような張りはないが、でも無事だったのかと胸を撫で下ろした。


脳裏をよぎったあの日のマサキの瞳を振り払う。


けれど彼は息を吐き、



『実はうちの会社の事務所に強盗が入ってね、売り上げの一部が口座から引き出されていたんだ。』


「…えっ…」


『まぁ、資金の出所が怪しいだけに、警察になんて言えないんだけどね。』


ぎくりとした。


まさかあたしを疑っているわけではないだろうけど。



『だから当分会えそうにないんだ。
寂しいけど、こっちが落ち着いたらまた店に顔を出すよ。』


「………」


『なかなか連絡出来なくて悪かったね。』


それだけ言って、通話は途切れた。


脅されたとか言ったって、あたしも同罪のような気にさせられる。


だってあの後、あたしはマサキに心許していた部分が確かにあったのだから。