「俺さ、一応仕事決まったから。」


レンはあたしを無視で話し続ける。



「とりあえずはバイトしながら資格取って、夢のために頑張ろうかな、って。」


あたしの夢って何だっけ。


ホストじゃなくなったのに輝き続けているレンが、少し眩しく思えてしまう。



「つーか、カオルちゃんもお前と連絡取れないって心配してたし、今度は何があったか知らないけど、人のそういうのは無碍にすんなよな。」


いつだったか、レンが持ってきて窓辺に飾った風鈴が、涼しげな音色を響かせている。


テーブルに並べられた、そうめん。


すっかり食卓まで夏らしくなったというのに、まるであたしの時間だけが止まったみたいだった。


改めて正面へと腰を下ろした彼は、あたしを真っ直ぐに見据えた。



「もうやめちまえよ、あんなヤツと一緒にいるの。」


「………」


「何回も言うけどさ、お前が前に進めない原因なんて明らかなんじゃねぇの?」


さすがに言葉が出なかった。


レンは責めるでもなく視線を外さないままに、



「ルカ、今幸せなのか?」


それは、いつか誰かから聞かれたこと。


幸せの定義なんて明確じゃないのに、なのに人はそれを求めたがる。


あたしは顔を俯かせた。