翌日の葬儀も多分、滞りなく行われたのだと思う。


知らない間にお経があげられ、知らない間にお母さんは灰になっていた。


もちろんあたしだって参列していたのだけれど、でも正常な状態ではいられなかったから、何ひとつ覚えていない。


木々を彩っていた桜なんてとうの前に散っていた。


春の陽気に包まれた中で、お母さんはあたしを残し、旅立った。



「ルカちゃんはやっぱり一旦帰った方が良い。
今後のことは落ち着いてからまたゆっくりと叔父さんと話をしよう?」


叔父さんは本当に良い人だった。


常にあたしを気遣ってくれたし、生活のことまで心配してくれている。



「ありがと、叔父さん。」


精一杯でそれだけ言い、あたしはレンに支えられる格好できびすを返した。


まだ視界にはもやが掛かっているみたいだった。


だから気付かなかったんだ。


一番後ろで葬儀に参列していたあの人の存在に。



「ルカ。」


呼び止められて、振り向いた。


横にいたレンはその瞬間に気まずそうな顔をするが、構わず彼は、



「すっかり見違えてて、本当に驚いたよ。」


「…何、で…」


「なぁ、こんな時だけど少し話せないか?」


「…何で、お父さんがっ…」


声を掛けてきたその人は、10年以上も前に別れたお父さんだった。


あたし達を捨てた、お父さん。