ルカは何も悪くない、早くに亡くなったのはおばさんの自業自得だよ、自分を虐待してた親のために涙なんか流すな。


レンはしきりにそれを繰り返していた。



「お前の気持ちはわかるけど、おばさんのために泣いて何になる?」


「………」


「…本当は、葬儀にだって出る必要はないんだから。」


あたしを一番身近で見てきた彼は、最後に一言そう呟いた。


またボタボタと涙が零れる。


走馬灯のように蘇る記憶の中のお母さんの顔はどれも、あたしに向けて笑い掛けているものなんてなかった。


それでも、死んで良かったなんて思えない。


レンが言っていることは確かに頭では理解出来るけれど、でも、やはり悲しみの方が勝っていた。


例えどんな人だったとしても、彼女はあたしにとって、唯一無二の母親だったから。


女の子に生まれてきてごめんなさい、お兄ちゃんの代わりになれなくてごめんなさい。


あの日のメールを無視してごめんなさい、と、繰り返すように漏らしてしまう。


レンはただ唇を噛み締めていた。



「わかったから、もう良い。」


「………」


「ルカが苦しむのなんてもう十分だ。」


支えるように、包み込むように、レンによって抱き締められた。


けれど、ダブったのはお兄ちゃんの顔だった。


だからやっぱり涙は止まらなかった。