「顔をあげて下さい」
そう言うとゆっくりと浅野さまは顔を上げた。
不安で仕方ないという表情をしていた。
「浅野さま、これ」
わたしは生徒手帳を出して浅野さまに見せる。
「あ、俺の…」
「これがないと困るかと思いましたので」
少し安心したのか肩の力が抜けたように見えた。
「あ、ありがとう…ございます」
浅野さまは笑顔になり手帳に手をのばした。
浅野さまの笑顔が見れてわたしはとても嬉しくなった。
とっさに手帳を持つ手に力が入った。
「え…?」
浅野さまは驚いた表情でわたしを見て手を離した。
「慰謝料払ってもらえますか?」
そう言うと浅野さまの顔がどんどん青ざめていく。
「いくらくらいですか…」
「わたくしは浅野さまと恋がしたいです」
精一杯の笑顔で言った。
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