「東堂、今日は歩いて帰るわ」
時間通りに来た東堂に言った。
「いったいどうしたのですか?」
「わたくしは世間に疎いわ。もっと一般の世間を見てみたいの」
東堂はニコッと笑った。
「当然ながら東堂もお供させていただきます。よろしいですか?」
「わかっているわ」
東堂は全てわかっているでしょう。
けど、黙って深く追求してくるわけではなくついて来てくれる。
「東堂、お兄さまは元気なのかしら?」
殺風景だった冬から季節は変わりだいぶ過ごしやすい季節になった。
学校からの帰り道にある並木道は芽吹き、春の心地よい風が吹いていた。
「遼太郎ぼっちゃんがお家を出ていかれたのもこの季節ですね」
「お兄さまが出て行ったとき、わたくしはまだ幼くて意味がわからなかったわ。けど、今ならお兄さまが出ていったのもわかるわ。」
「お嬢さま…」
親が作った人生などに縛られたくなかった
お兄さまは自由を求めてカゴの外に出た鳥の様なのだろう。
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