最後に外に出た俺はお嬢さまがこっちに向き直すのを待たず頭を下げた。
「さっきはすみませんでした!急いでいたとはいえ、ぶつかったのに…俺は慰謝料を払えるほどお金は持っていなくて…」
お嬢さまの足下を見ると振り向いたようで
「慰謝料ねえ」
クスッと笑った。
「顔をあげて下さい」
顔をあげたくなかった。
けど、そう言われたらあげるしかない。
ゆっくりと顔をあげるとニコッと笑うお嬢さま。
「浅野さま、これ」
お嬢さまが何かを差し出した。
「あ、俺の…」
生徒手帳だった。
「これがないと困るかと思いましたので」
ぶつかった時に落としたのか…
わざわざ届けに来てくれたのか?
「あ、ありがとう…ございます」
生徒手帳を受け取ろうと手を差し出すと
お嬢さまはニコッと笑って生徒手帳から手を離さなかった。
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