次の日、夕月さんは学校には来なかった。
その次の日も、また次の日も。週が変わっても、月が変わっても、夕月さんは来なかった。
そして、また噂を耳にした。
《夕月さんが転校したらしい。》
…早い、これは早すぎる。ついこの間転校して来たばかりなのに、もう遠くに行ってしまったのか。
…違う。僕には、彼女自身の口から゙お別れの挨拶゙を告げられていたんだ。
これが、「またね」じゃなくて「ばいばい」だった理由。
夕月さんは、毒みたいな人ってだけではなく、勝手な人でもある。
僕に話しかけてきたのは夕月さん。僕の空間の中に勝手に《夕月さん》という存在を刻みつけておきながら、その時間を無かったものにするように、身勝手に消えるんだ。
《夕月さんは、海外に行ってしまったらしい。》
…これもまた、情報通の友人が言っていた。
噂の転校生、夕月さんとは高校を卒業し、大学を卒業し、社会人になり会社に勤め始めた頃になっても再会することはなかった。


