彼女は驚いたように一瞬目を見開き、ぱちぱちと瞬かせる。あれ、俺なんか今可笑しなこと言ったかな?
数秒の沈黙の後、彼女が耳の後ろに髪をかけ口を開こうとしたが。
「雪矢ー、帰るぞー!」
その声は音となる前に俺の名を呼ぶ、急かしてくる声によりのまれてしまう。
なんだか惜しい気もするが、ここで彼女を選んだりする可能性は普通に考えてナシだろう。
「…じゃあ、」
「あ…」
「文系2年の藤沢雪矢。もし何かあったら、言いにおいで。」
取り敢えず、名乗るだけ名乗って。俺は彼女から踵を返し自分を呼んでいる奴の元まで駆けた。
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数日後。
昼休憩に入ったきょうしつに、何時もとはまた違うざわめきがおこった。
そして
「藤沢先輩と言う方、いらっしゃりませんか。」
あの、凛とした響きのある声が聞こえたもんだから勢い良く視線を声のする方へ投げた。


