なんて親父臭いことを思ってしまう俺ももうすぐ三十路。あー、年とるって嫌だ嫌だ。純粋な心が汚されていくよ。
茉希ちゃんが店長の部屋に入るまで俺を物騒なものでも見るかのような目で見ていたのは気のせいだと思う。
……さて、と。
閑散とした廊下は備え付けの電気が俺だけの存在を影に落としている。一人は、寂しい。
スニーカーの底が擦れる音を聞きながら、足はどんどん前へと進めていく。
早く、早く、傍に―――――――…
アルバイト先の店が入っているまあまあのデカさのビルを出ると、俺は足早に彼女が待っているであろう待ち合わせ場所のファミレスへ急ぐ。
その途中、季節は本格的な冬へと変わっていたことに今更ながら気が付く。
俺が歩く速度を上げる度に肌を刺すような向かい風が冷たい。
雪が降ればいいというキーワードから少しロマンチストまがいな想像をしてしまった。隣にいるのは、勿論彼女。