俺の声に俯いて歩いていた顔を上げて挨拶を返してくれたのは、ここの後輩の女の子だ。
綺麗な顔をした彼女は何を隠そう、馬鹿で優男じみた弟の彼女である。そして、店長のお気に入り。
怖いくらい、実力のある占い師。
「杉山さん、何でじっと見るんですかうざいです。」
「君は年上を敬って。」
すみません、と謝る茉希ちゃんからは謝罪の意思が伝わらないから逆に傷付いた。無駄な怪我を心におった俺。
何してるんですかと言いながら俺を見上げた茉希ちゃんに、俺は曖昧に笑って見せた。それに彼女はぐっと眉間にしわを寄せるからこれまた曖昧に視線を外した。
茉希ちゃんは、勘が鋭いから時折見せる鋭い眼光が怖い。
「…じゃあ、失礼します…。」
「うん、青と仲良くねー!」
「五月蠅いです。」
くっくっと笑った俺を、茉希ちゃんはぎろっと睨み付けて来るけど。その頬はほんのり赤い。うん、20代前半は若さを感じる。