ニヤリ、妖艶に笑う姿に息をのむ。顔を少し傾けた純さんは近距離で囁くように言の葉を紡ぐ。
「杏、明日の予定は?」
「えっと…、午前中バイトで、午後からは特に…。」
そ、と満足げに微笑み頷いた純さんは残り数センチの距離を一気に近付け、あっと言う間にそれを無かったものにする。
重なる唇は、熱く。口内を犯す舌からはほんのりと、煙草とビールの味がした。
だからかな?酔ったみたいに、純さんのシャツにしがみつく。離れないように、ギュッと。
「…明日、午後からどこか行こうか?」
「(それって…、)」
デートですか?と答えは分かってるけど訪ねながら見上げた純さんの顔は、柔和な笑みを浮かべ、私を見下ろしていた。
「どこ行きたい?」
そう聞いてきた純さん。特に、行きたいという所はないから、私は純さんに同じ質問を返す。
と。
少し考えた純さんは指に私の髪を絡ませ遊ばせながら、「俺は杏の行きたい所に行きたいよ」と囁いた。