「はい?」


自分の席からゆっくりとした動作で立ち上がり、噂の転校生の元まで歩み寄る。

傍に近付いてみて思ったことだが、この転校生はどうして僕の名前を知っているんだろうか。僕と彼女の接点なんて何一つない。現に彼女の名前さえ知らない。



そんな僕の心情を察してか、はたまた僕の思っていることは怪訝な瞳を向けたことでバレバレなのか。

それは定かではないが、転校生の彼女はにっこりと微笑んだ。



「夕月、です。」

「あ、どうも。僕に何か?」

「ううん。ただ、貴方と話してみたかったの。」

「…なんで?」

「だって一ノ瀬くん、楽しそうなんだもの。」

「…、」



彼女、夕月さんが言っだ楽しそゔの中にどんな意味が隠されているのかは分からないけど、何だかすごく興味を持った。


――…それから、僕と夕月さんはよく話す友人になった。



そうなって思ったことが、一つ。


《夕月さんは毒みたいな    人だ。》