「直ちゃんがくれたのに、付けないなんて勿体無いからね。」
「…ありがとうございます。」
「綺麗な色だね、こちらこそありがとう。」
――…彼の耳に光るピアスは、以前会った時に私が誕生日プレゼントとして彼に贈ったものだ。
紫紺のそれは、一目見た瞬間に彼に似合うと思った。誕生日は聞いて知っていたから、即購入。ブランド物で値段は張ったが、彼のためならどうってことない。
「直ちゃんの誕生日は、いつなの?」
「7月5日、です。」
じゃあ、と彼は呟くとゆるりとした笑みを口元につくり。
お返し楽しみにしててね、と笑った。とても綺麗で優しい笑みをよく浮かべる人だ。
「あ、いつものありますか?」
「ああ。ちゃんとあるよ。」
彼は身を屈めると、沢山の香水の中から一つ手に取る。それを自身の顔元へ近付け「これだよね」と微笑んだ。
こくりと頷けば、それを持ちレジへと歩いていく。その後ろ姿を追いかけ私もレジへと近付く。