様々な色のフレグランスが並ぶ店内は、沢山の香りが混ざり溶け合っている。

そこに足を運ぶ回数は月に一度だけ。なのに、彼は私を覚えてくれているんだ。


カラン、と。ドアを開ければ心地良い鈴の音が店内に響く。

「いらっしゃいませ。」


さらに心地良いのが、鈴の音の後に聞こえる柔らかく落ち着いた声。

嗚呼…、彼の声だ。


「(この声好きだ、な…。)」



声の主に見とれている私に、その人は綺麗な微笑みを浮かべ。


「直ちゃん?」


そう、私の名を少しばかり首を傾げ甘すぎる声で呼ぶもんだから…、心臓がオカシクなりそうだ。



「…こんにちは。」

「うん、1ヶ月振り。」


にこりと笑った彼は、さらさらの襟足が少し長く明るい茶髪を、後ろで一つに結う。

左耳に光る、紫紺のピアスに視界は釘付け。



「…あ、それ…、」


ん?と微笑んだ彼は私の視線の先を辿り、自らの左耳へと指を添えると、ああと呟き。

少し照れたように笑う。