高校3年の夏休み明け。この季節には珍しすぎる転校生が来た。
《長く綺麗な黒髪は高い位置に一つで結われ。透き通るような肌に輝くどこか妖しげな瞳に、吸い込まれそうになる。》
…らしい。
転校生が来るだの来ただのということは、噂で耳にしていた。さっきのも、わざわざ転校生のクラスまで見に行った友人情報だ。
僕はどうして転校生が来たってだけでそこまではしゃげるのか…、デカい声で騒ぐクラスの男子に冷眼を向けていた。
と。
「一ノ瀬くん。」
初めて聞く声だった。こんなに騒がしい教室の空間に、ハッキリと僕の名前を刻む柔らかい女の声。
誰だ、なんて考える間もなくその声の主を見つけることは容易かった。
「(あ、)」
きっとそうだ。確信、と言い切れる自信がある。
長い黒髪は頭の高い位置で一つに結われ、透き通るような肌、そして何より印象的な吸い込まれそうになる大きな瞳。
きっと、彼女が例の転校生。