「こっちへおいで、志鶴。話がある」

圭吾さんはわたしをソファーに座らせると、わたしの前にひざまずいて手を握った。

「電話は悟からだった。美月ちゃんが育てていた龍が死んだそうだ」


「龍って……あのトナカイみたいな?」


圭吾さんはうなずいた。


「美月ちゃんは君に来てもらいたがっている。悟は君に見せたくないそうだ。決めるのは君だ」


美月がわたしに来てほしいなら行ってあげたい

だって、反対の立場だったらあの子は必ず来てくれるはずだもの

でも

『死』を見るのはつらいし、怖い


「僕は――僕は出来るだけ君に悲しい思いをさせたくはない。だけど、生きていれば避けられない悲しみもある。忘れないでいてほしい。僕がいる。どんな時でも。僕に君がいるように」


わたしは真っ直ぐに圭吾さんを見た。


わたしは

わたし達は、ただ好きだから一緒にいるんじゃない。

お互いが必要で一緒にいるんだ。


「連れて行って」

かすれた小さな声で、わたしは言った。

「後悔したくない」