二人の距離が幾分か広がった。
咳き込むレインに、黒衣の執事は穏やかな口調で問い掛ける。
「すみません、こうでもしない限り反撃できそうもなかったもので…」
手荒い真似を、とクラウンは嘆くような表情を見せる。
と、おもむろに彼のすぐ脇で墜ちていた雪が吸い込まれるかのように渦を巻いた。
空間が歪んだのだ。
『歪みの魔術師』、クラウンが背負う異名である。
歪んだこの近道の先には、“お仕置きの物置”<ホークラックス>が。
歪んだ通り道に手を差し込んで、取り出したのは三叉の槍。
長身なクラウン本人ほどの長さがあるそれを持てば、彼は悪魔にも見える。


