「それで、お嬢様。
本日は如何なるご用件でございましょうか。
あいにく当屋敷の主は就寝なさってしまったものですから。」
彼女は、黒い刀身のそれを腕ごとだらりと下げた。
用件などわかっているだろうに、とでも言いたそうな、呆れたような表情。
「お嬢様はやめていただけませんか。
私もとある御方に仕えている身分ですから、様なんて呼ばれ方は慣れません」
「おや、ではお名前をお伺い致しましょう」
「お宅の主を暗殺しに来た女に、名前を訊くのですか」
「それもそうですが」
ああ、目の前の暗殺者はなかなか冷静な人間らしい。
薄くて色素の薄い唇を三日月に曲げて、クラウンは微笑んでみせた。


