「行くって、どこへでしょう」 後ろからの声に、びくりと肩を震わせた。 振り返れば燕尾服姿の男がいる。 「おや、女性でしたか。 こんなお時間のお客様はたいてい物騒な身なりの男性なのですが」 「物騒な、の件は間違ってませんね。 女性でがっかりしましたか?」 「いいえ」 燕尾服の男…クラウンは、いつになくにっこり微笑む。 一方の彼女は、険しい表情のままクラウンを凝視していた。