広い屋敷はまるで悪魔の巣窟のよう。
主並みに、ここの主人は悪趣味なんだろうな、なんて考えている。
月を背に佇む一つの影。
腰には剣を携え、小柄な身体の上にサイズの合わない男性用のスーツを纏っている。
ちらつく雪は目障りで顔をしかめるが、こればかりは消し用が無い。
時刻を確かめ、彼女は身なりを整えた。
汚い仕事とはいえ、お客の前では礼儀正しくと教えられたのだから。
「さて、行きますか」
呟いて剣を抜く。
女性があまり持たないものだが、細身のレイピアは凛々しい彼女に充分溶け込んでいた。
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