月明かりに照らされて、二人は雪のようにしんとした殺意を散らせる。
石畳の庭園に積もった白い絨毯は無惨にも踏み荒らされていた。
「お強いんですね。
“本質的に”鍛え上げられた方を相手にするのは実に久しぶりです」
いつもは、武器という人工物で塗り固められた薄っぺらな防壁ばかり。
完全無欠な執事クラウンには何の障害にもならなかったが。
「仕事柄。
気紛れで気難しい主に仕え、人間から並外れた力を持つ敵を相手にしていると嫌でもこうなります」
「ああ……」
わかります、と続けたかった。
文句のような言葉の羅列には、しかし嫌悪は感じられず、むしろ誇らしいに近い感情がある。
クラウンとは少し違う、でも少し似たところがあるのだ。


