「おんこ、ご飯出来てるわよ」
家に帰ったおんこには母親手作り、熱々の朝食が待っていた。
今日の献立はご飯、さつまいもとわかめの味噌汁、焼き魚として秋刀魚。
「秋の味覚っ!いただきますっ」
「お味噌汁たくさんあるからいっぱいたべてね」
「うんっ」
ご飯を美味しそうに頬張るおんこは幸せが溢れ出ている。
と、その時。
「おはようございます。おんこ嬢、今日のご予定は?」
つと襖を見れば『五十嵐工務店』の文字が入っている紺の羽織を着た20代の男がいた。
「ん、おはよう、高崎。いつもみたいに学園の外で待機。直ぐに呼ぶと思うからいつでも動けるようにしておいて」
すらすらとおんこの口から出たのは、おんこが話しているとは思えない程の事務的な声。
「わかりました。皆既に集まっていますが、ミーティングはどのように?」
「今行く。部屋で待ってて」
「はい。お食事中失礼致しました」
男は部屋を出て、静寂の中に襖の閉まるトンという音が響いた。
「はぁ〜。いつまでたっても肩が凝るよっ」
その音を聞いたとたんにへなへなと崩れるおんこ。
「次期棟梁として練習するんでしょ?頑張りなさい」
「それはそうなんだけどっ」
複雑そうな顔で残りの朝食を手早く食べると、慌ただしく部屋を出る。
「ごちそうさまっ」
遅れて思い出したかのように声が届く。
「あらあら」
おんこの母親はにこにこと笑いながら綺麗に空となった皿を片づけていく。
――現在時刻、午前5時45分