「……ごーかく」
「え?」
いつの間にか涙が滲んでいた瞳を目一杯開いて、目の前の獣ではない母親の晴れ晴れとした満面の笑みを見つめる。
「合格よ。
……強さは時に更なる強さを呼ぶわ。それは仕方のないことよ。でも、だからこそ、覚悟のない者には強さを与えることができない」
母親はそこで言葉を切り、妹の言葉につられて止まっていた姉を見つめる。
射るような目線にびくりと震える姉。
「あなたはどう?覚悟はあるのかしら」
「わた、し……は」
真っ直ぐ投げかけられた問いに答えられない。
強さを求めた。
それは事実だ。
李 龍娘にどんな形でさえ退いた身として、強さを求めていた。
でも、それが何故なのか解らない。
負けたから強さを求める。
その先に、あるモノが、ワカラナイ。
「リーニア、あなたが最初に強くなりたいと思ったのは何故?」
優しい、いつも通りの母親の声。
しかしその声が間近で聞こえたことに驚いた。
気は抜いていないつもりだった。
そう、思っていただけなのかも知れなかった。
「っ!!」
声も上げられないほど重い打撃。
――揺れている脳が最後に考えたのは、今の攻撃が回し蹴りだったという事。
――落ちていく意識が最後に思ったのは、最初に強くなりたいと思ったのは何故だろうという事。
「リーニア!!」
姉を呼ぶ妹の声が広い空間に響いた。

