奇怪な面々の日常な朝事情!




「まさか、そうくるとはね。……傷ついちゃった」



頬に手を当てて出血がさほど多くないことを確認。


勿体無いかな。と言いながら指先に付いた血液を嘗めとる。



「……やっぱり自分の血って美味しくないわね」



母親は渋い物を口に入れたときのように、ちろっと舌を出して眉間にしわを寄せる。


それでも勿体無いと思うのか全てを真っ赤な舌で嘗めとっていく。



「……どうだった?私達の連携技」



双子は十分に距離をとりつつ母親へと言葉を飛ばす。



「素晴らしいわ。まさか爪で片方飛ばすだなんて」



母親はパチパチとやる気なく拍手を送る。


先ほどの攻撃に関して言えば、初めの攻撃に意味はなかった。


ただ行きたい方向に敵がいたから攻撃した、ただそれだけ。


双子の目的は最初から直線で進む自分達が一点で交わること。


そしてその一瞬の間に片方をもう片方が弾き、敵へと速さを加えて飛ばすこと。


うまく行けば軌跡すらも残さずに移動できる。



「ただ……あたしを傷つけたのはいただけないわね。それもこんな中途半端に。やるならもっと、そう、例えば四肢の一本くらい駄目にする気でやらなくては」



母親の真っ赤な唇が歪む。


先ほどリーニアが見せた狂喜、其れに近しい、しかしもっと濃縮されたような笑み。


双子は自らの母親が発する感情そのものに戦慄した。


それはもはや殺意と言っても過言ではなかった。






獣は動く物を獲物とする。


そのために恐怖で後退しようとする足を叱咤し、何とかその場で静止している状況。


けれども母親が一歩でも動こうものなら、すぐさま逃げれるよう瞬き一つしないでソレを凝視する。






――全ては、己の命を守るため。






その術を、生暖かい、ぬるま湯のようで、生きやすい、あの学園で、忘れてしまっていた……






だから――