奇怪な面々の日常な朝事情!



先ほどまでとは違うことがもう一つあった。



「……それは通じないって、学習しないの?」



つまらなさそうに母親は呟きながら、残像さえ残らない速さの攻撃を一歩前進する事で避けた。


そして何とはなしに行方を目で追っていく。


部屋の隅でまた方向を変えると思われたその時。


キィンッ!


まるで金属の刃がぶつかったような音を響かせて何かが母親に迫る。


予想外の攻撃に辛くも後方へと飛び上がった母親の頬から鮮やかな一筋の紅い軌跡が描かれる。


見開かれた濃い紫の瞳に映るのは、長い白髪。



「リーニア」



悔しがるような、面白がるような、それでいて嬉しそうな声で自分を傷つけた者を呼ぶ。




紅い瞳を細めて、にたりと唇を歪ませるリーニア。


自らの爪に付着した鮮血をうっとりとした表情で見つめる。


そして。


紅い、紅い、その液体を、真っ赤な舌で嘗めとった。


綺麗に全てを嘗め終わった後、まだ足りないとでも言うように唇に付いていた血までも嘗めとって。



「……美味しい」



恍惚とした、世にも美しい吸血鬼の笑顔で幸福そうに言った。