奇怪な面々の日常な朝事情!



――二つの陰が消えた。


高速で移動する双子は最早黒い線として見えた。



「確かにあたし達のスピードは武器だ。常人はおろか、超人でさえも視覚でとらえることは不可能」



唯一その場に留まった母親が二人に聞こえるように話している。


時折ダンッ!と方向を変えるために床や壁を蹴る音が聞こえた。



「しかし、人外に対しては万能ではない。
――何故なら、」



言葉を止めた瞬間。


一際大きな踏み込みの音が場を包み込む。


吸血鬼特有の黒く鋭い爪が、まるで猛禽が獲物を捕らえるように母親の首筋を容赦なく襲う。



「あたし達ではスピードを御し切れず、速いけれども単調で直線的な攻撃になってしまうから」



目にも留まらぬはずの攻撃を少し体を傾けるだけで避けた。


そして、襲ってきた腕を利用して空中へと体を浮かせ、かかと落としの要領で相手を沈ませる。


その際に広がる長い漆黒の髪を見て。



「……てっきり妹かと」



呟きながら一瞬で妹の位置を確認し、姉が床に当たる前に再び空中に跳ぶ。