「あ、言い忘れてたけど、模擬試合だから死ぬことはないだろうとか考えるの止めてねー。
本気でこないと、死ぬよ」
いや、あたしが殺すんだけどさーとケラケラ笑う。
その言葉が嘘ではないことを、二人は知っている。
言葉で、目で、耳で、頭で、知っている。
二人は自然と立ち上がり母親を見据えていた。
「妹。一人で相手しようなんて、無茶なことわかっていたでしょう?」
「わかっていたけど、そのためにリーニアを巻き込むわけにはいかなかったから……」
「……わかってないなぁ。妹の為なら私何でもするのに。
それに、お母さんも自分が危ういこと自覚してるから私を巻き込んだの。お母さんも心配してるのよ、傷つけたりしないかってね」
「無理な気がする……。母様相当、欲溜めてたみたい」
視線の先に二人の優しい母親の姿は無い。
あるのは、血に飢えた吸血鬼の姿。
それを忘れてしまえば宣言通りに殺されてしまう。
――「さぁて。あたしを楽しませて頂戴、可愛いあたしの娘達!!」
広い演習場の中に声が広がった。

