「……ニア、リーニア」



誰かが誰かを呼んでいる。



「リーニア!」



「…………んぅ?」



暗闇の中、眠そうなかすれた声がした。



「エイラン・リーニア!!起きなさーい!」



「……うわっ!」



誰かが怒鳴る声とともにドタッと何かが落ちる音が聞こえる。


一瞬遅れて誰かの驚いた声。



「痛い……。もう少し優しく起こせないの?」



文句を言いながら床に這いつくばっている少女。



「優しく声かけたのに起きなかったリーニアがわるーい」



少女を見下す女。



「あー、夢見が悪かったからかな」



わしゃわしゃと背中まである漆黒の髪をかき混ぜながら、やっと床から体を起こしたこの少女。


名をエイラン・リーニア。


天神学園高等部二年生であり、



「……午前3時?」



暗闇でも難なく時計の針が読める夜行性妖怪、吸血鬼の血を引く少女だった。