詐欺師の執事と嘘つきな私。



開いたドアの向こうには作業服を着た執事がいた。

「この間のオークションで落札されたグラスをお持ち致しました。
サインと印鑑をお願いします。」

そう言った後、社長が奥の部屋に印鑑を取りに行った瞬間に執事は私の両手を繋いでいた手錠を壊した。

「お嬢様。今のうちに外へ。
車を玄関に停めてありますので。」

軽く頷いた私は自らのはだけた服など気にせずに部屋の外へと駆け出した。

もう二度とこんな役はごめんだ。
父は殺す。
そして執事には説教を夜通ししてやる。

安堵からか涙が溢れそうになるのをぐっと堪え車に乗り込んだ。