詐欺師の執事と嘘つきな私。




エレベーターの中の空気に気まずくなった私を助けるかのように、到着を告げるベルが鳴った。

ドアが開くとそこには大きなホールが広がっていて、スーツの男がたくさん椅子に座っている。

「そろそろ始まるようですね。前の方の席に行きましょう。お嬢様お手を。」

そう言って手を差し伸べてくる。
本当にこいつは。

「…ん。」

先程のエレベーターからの照れなのかろくに返事もできない私は、顔も見ずにそっと彼の手に自分の手を重ねる。