「岸山さん、入って」

「はい」

緊張しながら、教室に入る。

そして、黒板の前までいって、みんなのほうを向いて立った。


あああ、みんなの視線が痛いほど体につきささるう…。

「お家の事情で、今日、ここに編入してきた岸山実織さんです。岸山さん、自己紹介を」

その言葉で、また、みんなの視線が一斉にわたしに向けられる。

ひぃぃ…、お助けえ~…。

「えーっと…、岸山実織です。よろしくお願いします」

「みなさん、いろいろと教えてあげてくださいね」

ふう…、なんとか言えたよ…。

ほっとため息。


「えーっと、席は…。どこが空いてる?」

「先生、俺の隣が空いてまーす」

「じゃあ、そこにしましょう。岸山さん、いちばん後ろの空いている席があなたの席よ。あそこに座って」

空いていたのは、いちばん後ろのいちばん窓際の席。

あー、日差しが差し込んで気持ちが良さそう。

あんなにいい席が、わたしの席なんてツイてる!