お嬢様は家出少女


「ううー……」

岸山は目を瞑ったまま。


「あー、ほんと、俺はなんてことをしてしまったんだあー!」

…岸山をこうした本人は、まだそんなことを言ってやがる。

「もう立ち直れよ」

「拓也! 岸山のこと、よろしく頼むぞ!」

なんだ、その彼氏みたいな発言。


いや…、本当に彼氏だったりするのか…?


…でも、そんなこと俺にはかんけーねーよな。


…かんけーねーのに…。

なんでこんなに気になるんだ?


「お前…、こいつの彼氏なのか…?」

「えっ……」


とうとう口から出た質問。


どこかで、「違う」と言ってくれって思っている自分がいる。


俺、なんかおかしくなってきたかも…。


「なれたらなりてーよ!」

「は…?」

「でもさあー! 俺は、容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀、どれも当てはまんねーし!」

「…」

「拓也だったら、岸山を惚れさせられるんじゃね? 岸山はお前に、他の女みたいにきゃーきゃー言わね―から、それができたらすげーと思うよ?」


そっか…。

こいつは彼氏じゃないんだ…。


…って、なんで俺、ほっとしてるんだ?

あー、やっぱり俺、どうかしちゃったかも…。



そこで長居しすぎたから、そいつと別れて、腕にしがみついたままの岸山と暗い山道を歩き出した。